沖縄中部に位置する中城(ナカグスク)へ初めて訪れた。
良く晴れた日で、ドライブの気持ちよい日だった。空も徐々に青から黄金色に変わろうとしている。
美しく積み上げられた琉球石灰岩の石垣が、綺麗な曲線に浮かび上がっていく。

まるで恋人のような爺さん二人が、城壁の上から海を見渡し何やら熱く語りあっている。
鳥が囀り、草木が緩やかに揺れていた。

その全てのゆるやかな時間を遮るように
巨大な軍用機のシルエットが、轟音と共にすぐ頭上を越えていく。
”結構近いとこ飛ぶなぁ・・・”

さっきの恋人のように話していた爺さん達が、気づくと僕のすぐ横まで来ていた。僕の隣に立ち城壁の下の穴をさして「中を覗いてみなさい」と話しかけてきた。恐る恐る近づき中を覗く、なめ回すように覗く・・・よく見るけれど・・・・・!?!?

顔を抜き出し、爺さん達の方を振り返ると
「覗くまでが楽しいでしょう。何だろうって興味が楽しいでしょう。」
と楽しそうに微笑んでいる。
「あの穴は、戦時中 日本軍が防空壕を掘ろうとした穴で、あまりに堅くて断念した穴なんだよ」と説明してくれた。
続けるように「それも歴史の一部、世界遺産になった今も残しているんだよ」。

この気持ちよい冬の陽気に思い出すこともない戦争の歴史と影。
それも沖縄の一部なんだとお爺さんは語っていた。

「沖縄の春がこの先にあるから見ておいで」と今年もまだ始まったばかりの沖縄で僕らを導いてくれた。

そこには、気の早いサクラがチラホラと咲き始めていた。