五年ほど前に読んだ雑誌に「フーコック島」の記事があった。
観光の目玉がほとんどなく、日本人から見過ごされている島。
観光客が一日数人しか来ない島。
手つかずの自然と人の手が入った自然の境界線上にある島。

なぜか未だ、心の何処かに引っかかっていたことが珍しいと
一途、ホーチミンより富国島へ。

人工と自然。島人と観光客。空と陸と海。過去と現在。

境界線上には、何か不思議なことがあるような気がする。

目の前には、遠くまで続く青い海と青い空。そして白い砂浜。

不意に背後が気になって振り返る。

青い空、緑深い山
そして暗黒の雲が、その山の影から「グンっ」と顔を出している。
遠くから近づく白いカーテンのような雨の境界線と滝のような轟音・・・
これは、ヤバいっと雨宿りできそうな場所まで残り10メートルほど、本気で走った。

その瞬間、僕の周りは水の壁へと変わった。

ぎりぎり。
藁葺きの屋根に、叩きつけるような豪雨。
超特大のスコールが、考える間も与えずに僕の周りを飲み込む。

数分もしないうちに、海面が、どんどんと盛り上がっていく。
自然の驚異、そして恐怖と同時に、美しさすら感じる。

・・・その雨のすごさの中で、無邪気にはしゃいでいる欧米人が、海の中から手を振っている。

 

”危ないよ・・・あんたたち。”

雨は更に激しくなり、白い雨のカーテンの向こうに彼らの姿は消えた。
それほど激しい雨。

海から走って四人組が上がってきた。
“Oh Big One”
笑っている男二人と怖さで引きつった二人の女。
無事で良かったと一安心。

間髪入れず、水着のままオートバイ二人乗りで豪雨の中へ再び消えていった。そしてカフェにポツンと取り残された。
この目まぐるしい変化に動揺し、我に返る。

目をつぶって、雨の音を探索する・・・意識をどんどんと遠くの方へ飛ばしてみる。
なんとなく静かな空間(雨の切れ間)を見付けたような気がした。

不思議な感覚。

目を開けると、雨は静かに止んだ。
これは「幸運」!!
今がチャンスと僕は、一目散に残り100メートルのホテルまで駆けだした。

そして豪雨のリスタート。

あの恐ろしい豪雨の中、ほとんど濡れずにホテルに戻れるた。

この日のビッグワンなスコールは、更に長時間な豪雨になり
ホテルのスタッフも笑いながら驚いていた。

そして深夜、ホテルのレストランで食事を終え、小雨の中 部屋へ戻ると
光を求めて何百匹を超える黒い大群が次々に、部屋の灯りに群がっている。
そしてドアの隙間から部屋の中へ潜り込もうとしている・・・

人と虫との戦いの幕開け。
電気を消し、暗闇の中 新聞紙でバチバチとやってみたもののきりがなく・・・なんだか疲れて眠ってしまった。

朝になり外を見ると ベランダには、巨大羽アリの羽だけが黒い絨毯のようにぎっしりとあるだけ。。。
本体!?は、姿形 まったく無し。
体に似合わない大きさの羽だけが、散らばっている。
何処へ消えたんだろ・・・自然の不思議。

こんな豪雨も何の事やらと、翌日にはいつものビーチに。
アジアのビーチで必ずといって良いほど出会うマッサージ屋さん。
どこの国へ行っても、この人たちは 同じ言葉を使う。
「おにさん」「まっさーじ」「やすい」 [あとで」

不思議だ。一体、誰が彼女たちに教えるんだろ・・・組織的だったりして。
それにしても 灼熱の太陽とギラギラした海にも負けない
その発色の良い服。綺麗。

一日という時間を堪能する旅。あのとき、急ピッチで進みそうな気配の開発はどうなったんだろう。
またいつか、この島へと渡りたい。

時には、こんなホテルも良い♪絵に描いたような楽園的なホテル。
“La Veranda” Phu Quoc Island